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2008ハロウィーン
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なに?めずらしいじゃない にやにやしたりして。
リリン・ウィッチは、伯爵の使役に問いかけた。

彼は、小さなクリスタルをかざしながらひとりごちで、あくことなくそれをながめているところだった。

人の涙を 手に入れたんだよ。

ここにくるまでにあったことを、彼は静かに語りだした。

なんだかね、僕はあんなに人を美しいと思ったことはなかったんだ。
涙が、それは綺麗で。

リリンは 伯爵の使役を驚きをもってみつめた。

最初は哀しみに打ちひしがれていたのが どういう変化をきたしたのか。
せつなさも 傷ついた心も その涙によって洗い清められていくようで。
仕舞には、その犬への変わらぬ愛情でいっぱいだったんだ。
泣きながらほほえんでぽろぽろ涙をちらしてね・・・。
脆いくせに、なんて強くいられるものかと、だからおもわず採取してきてしまったんだ。

彼は、輝く小瓶をリリンに示し ちょっと体裁が悪そうに笑ってみせた。

それであなたは、伯爵にそのこのことを報告するつもりなの?

使役は顔をしかめた。
それが義務でもあるんだけどね、どうも気がすすまない。
伯爵の手に落ちれば、あのこはもう、清廉な涙などとは無縁になってしまうんじゃないか?

リリンはそこで大きくうなずいてみせた。
そうよ。
第一あのこは、ミルはわたしの大切な人間よ。
あなたがたには渡せない。
あのこの血の一滴だって、伯爵なんかには重すぎる毒になるわ。
あの方は、絶滅寸前の処女の血でも啜っていれば充分よ。
あなたもね、ミルの涙を口にでもしたらきっと奇麗に浄化されて、その存在すら残らないかもよ?

挑戦的で、すでに勝ち誇っているように、口元には半月方の笑みをたたえて彼女は言い放ったのだった。

あのこのことは、伯爵には黙っていよう。
しかしどういうわけなんだろうね?あのこの涙に僕は拘束されてしまったみたいだよ。

いつのまにか近づいてきていたりリンが、彼の耳元でささやいた。

わたしもずっと、あのこの呪縛にかかっているみたいなのよ。

二人の闇の住人たちは、顔を見合わせて苦笑いをこぼした。


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闇に染めたくないものも、いるものさ。






 
by.Purple


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