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2008ハロウィーン
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今日も砂漠のどこかから、人々を恐怖に突き落とす死者の咆哮が聞こえる。


私がこの発掘隊に加わってこんな辺境の砂漠に来たのは、まだ発見されていない王墓をみつけるためだ。
未だめぼしい遺物は見つかっていないし、ここがその場所だという確証も無いわけだが一つだけ、ここにはミイラ男の亡霊が出るという噂があるのだ。

うう・・・、やっぱり砂漠の夜は寒いな。
しょんべんついでに、少し歩こう。

満月に近い煌々と輝く月をみあげて用をたす。
そこに静寂をつんざくような男の悲鳴が轟いた。
私はなりを整えるのもそこそこに身を隠し、様子をうかがった。

遠めに、白くふわふわした人型のようなものが見える。
叫んでいた人間はもうおらず、白く照り映える銀盤のあしもとにいま姿を現し始めているものは、そのぼろぼろの染み垂れた包帯を、美しい褐色の肌に変化させはじめている。
生唾を、飲んだ・・・。
風に乗ってきた、強いミルラ香が鼻をくすぐる。
いまや完全にしなやかな青年の姿となった彼は、付き従う犬とけむりのように定まらぬ姿の何人かの従者に囲まれて空を睨んでいた。

「もうあんな無茶ないたずらはおやめになったらいかがです?」
「つまらぬことを言うな。これぐらいして気を紛らわせねば、どうやって時を潰していけというのだ。」

砂漠を、風が吹く。
古の王が、すでに帰還を果たした魂と、甦ることの無いその身体のはざまで彷徨っている・・・。

雲が、月を隠した。
王の姿がゆらいで 消えた。

月夜の晩には、彼は人だった頃の姿でこの砂漠を駆けるのだろう。
この砂漠のどこかにいるのだな。
わたしが探しているのは、君の骸なのだな?
きっと、探し当てて見せよう。
そして月光の中で語り明かせたら、と、夢想してみた。

また、月が現れた。


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by.Purple

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