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2008ハロウィーン
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一年にたった一度。
待ちに待った夜は秋から冬へ移り変わりの時期らしい乾いた冷たさに満ちていて、空は深い藍色に澄みわたっている。
暗く晴れたそこには細い三日月とゴーストたちの白く透き通る影がふわりふわりと過ぎてゆく。
まるで海の底みたい。
海月みたいなゴーストと、色鮮やかな闇の住人達が跳梁する。
鮮やかな色彩といってもそれは藍色に深く彩られていて、闇の生き物なのだと知らせている。
地上にもいくつもの妖しい影が蠢く。
土の下から起き上がったのか、深い森から現れたのか
人の世界からはこっそり隠れていた者たちのたった一夜のお祭り。

さあ僕達も行こう、って。
こっそり二階の窓からそんな世界をみつめていた僕は隣を振り返る。

本当に、マジだったの?なんて少し寝ぼけた声を出すのは生まれた時からの悪友でいつもつるんで悪戯ばかりしていた。それはいまも進行形だけど。

本気も本気、ずっと計画してただろ
声が大きくなりかけたのを、しぃっと彼の指が制するようにそっと唇と鼻先に触れる。

ほら静かにしないとみんなびっくりしちゃうよ
家のものも外の魔物たちも。

大人びた声がそんなふうに囁くからどきりとする。
勝手に先に行くなって言いたくなってしまう。最近急にそんなことを思う時が増えた。
みかけだって背丈はとっくに追い越されたし、実はクラスメイトに紹介してくれってせがまれて困ってる。
紹介なんてしないよ、こいつめんどくさがりやだから。
じっとその顔をみながら、心の中で呟く。
…てそんなことをしている場合じゃなかった。
お祭りはもう始まっているから、早くいかなけりゃ。

あそこ、ほら呼んでる。
囁く声に促されて、庭の大きな木の陰、深い闇が始まるあたりに目をこらす。たしかに手招きするみたいにひらひら白いゴーストが揺らめいてる。
誘うようにいくつもいくつも、白い影がふわふわと踊り続ける。
行こう、と、僕はもう一度ゆっくりその顔をみつめながら言えば今度はしっかり頷いてくれたから、音をたてないように静かに窓を開いた。
小さなバルコニーからこっそり手がかりの雨どいをつたって、誰にも気づかれないで闇の中へ降り立つ。
後ろから軽い足音が響いて、連れも脱出に成功したことを知る。
もうここは闇の住人達の世界で、空気はどこか甘くて深い。いつもの夜とはまるで違う。
ふわふわと空に遊ぶもの、ゆっくりと歩く黒い影
もう子供達のいたずらかおごりの時間には遅すぎるから、黒い影はきっとみな魔物たちだろう。ひっそりと歩く彼らが目指しているのは町外れの小高い丘で、そこは古戦場の跡だとか遺跡だったとか言われていわくつきの場所だ。
きっとあそこがパーティー会場に違いない。

こんなみるからに人間がまじって大丈夫?
面白がってるだけのくせにそんなところはちゃっかりと突っ込みを入れてくる。

大丈夫、ひとの形をしたものもいっぱいいるから
そう言ったら少し首を傾げて僕をみた。
それにちゃあんと貢物は用意しているから。

そっと持って出た小さな袋には深い深い黒のビターなチョコレートがたくさん
高かったけど、お小遣いをこの日為にためてたから平気。

これは内緒だけれどね、実は僕の家系には魔物がいるから、それで教えてもらったんだ。

そう言ったら、反論はされなかったけれど納得はしていない表情。
明らかに嘘とわかったかな。
でも本当はあの街外れの丘で弱っていた小さな闇の生き物が、そのときポケットに入っていた小さなチョコレートのかけらで友達になってくれたからなんてこっちの方がよほど信憑性が無い話なので嘘を突き通すことに決めていた。

さあはやくパーティーへ行こう。
いつもと違う空の天井と星のシャンデリアのダンスフロアで、魔女とダンスしてみせて。
君のステップはそれは素敵で溜息が出てしまうから、こんどは違うところでファン層が広がってしまうかもしれないけれどね。





 
by.blue
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