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2008ハロウィーン
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Trick or Treat! Trick or Treat! Trick or Treat! Trick or Treat!

家の外で、子どもたちが菓子をねだる声がする。
なんて騒々しい、まったくやかましい!変なかっこうをしてどこの子どもかもわからんのに、なんで菓子などやる必要があるか。わしはそんなバカ騒ぎなどごめんだ!
うるさいっ!菓子などやらんわっ!帰れ帰れっバカ垂れどもめっ!
巷で有名な偏屈ジジイ ダブ・ゲッチイは、二階の窓から身を乗り出してがなりつけながら子どもたちを追っ払った。
ゴーストたちは悪態をつきながら消えていったが さて。ダブはキリリときつく彼を睨んでいた目には気がつかなかった。
 

風が強い。黒い雲が獣のように走っては消えて行く。夜中を過ぎているのになにやら寒くて眠れないでいると、天上の影が変に蠢いた気がする。なんだバカバカシイ、気のせいだ。
ところが今度は台所で調理をしている音がしてないか?居間ではソファーのクッションが投げっこされ、スプリングに弾んで飛び跳ねワキワキ楽しんでいる気配までしている・・・!
だ、だれだ人の家で暴れているのは!ダブはベッドから降り、護身用だが骨董のマスケット銃を握り締めて音のする部屋へ向かった。
勢いよくドアをあけ、怒鳴りつけて構えた、が。
だれもおらん・・・?
立ちつくしていると不意にろうそくの火が灯った。そしてすぐに消えてはまた灯る。
家具が鳴り出し引き出しが踊り、額に入った絵画からは中の住人が飛び出してくる。本は勝手に空を飛び窓は開閉を繰り返す!
さすがのダブも恐怖に駆られ、サイドボードの影に隠れてその信じられない光景に今にも心臓が止まりそうになりながら でもしっかりと目は釘付けにされていた。
いや~な汗をかいた。なんとなく尿意までもようしたが立ち上がりなどしたらたちまちヤツラに襲われてしまうかもしれない。
人影、ではない。そこで集って暴れているのは 得体の知れないタダナラヌものたち!形がすでに人じゃない。それらしいのもいるけれど透けて向こうが見えている。それらがこぞって宙に舞ったり壁をすり抜けたり ものを操ったりしながら騒いでいる。
怖ろしい、本当にこんなことがあるなんて・・・!
しばらく様子をうかがっていると、ダブはそれらがとても楽しそうに遊んでいるらしいのに気がついた。
派手に羽目をはずすことを みんながいっぱいに楽しんでいる!流儀は違うが弾んだ気持ちが充満しているのがなぜかわかる。
偏屈ジジイはいつしか自分まで なにやら解放されたような心持でほんわりぼんやりそれらの無茶振りをまるで自分がしているように愉快な気持ちになっていた。


どれくらいそうしていただろう。うっすらと、夜が明けはじめ・・・
今まで暴れていたモノたちがそちらをふりかえり 動きをとめた。
そして一体 また一体と、明けきらぬ未明の空へと消えていく。
そんな!もう行ってしまうのか!?
ジジイはたまらずにサイドボードの引き出しをあけ 一つかみのそれを消えて行くヤツラの方へ投げつけながら言った。
来年も来たら またこれをやるぞ!
偏屈ジジイ秘蔵中の秘蔵菓子 ウイスキーボンボンの キラキラ輝く色とりどりな粒たちが新星のように光って
ゴーストの手に落ちた。
ヤツラはゆらり にやりと笑ったようで
こちらに何かを放ってよこした。
ダブジイさんはキャッチしてしまったものを見て 今度こそ気絶した。


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朝、ジイさんはいつも通り整然と片付いている部屋で目を覚ました。夜中の騒ぎの様子などどこにも残っていなかったが サイドボードのひきだしのウイスキーボンボンが減っていたし、なによりも、白い大きなしゃれこうべが自分の横に転がっている・・・。
ジイさんはゆっくりと起き上がり、そのナンノモノかわからない奇妙な骨を棚におき、新聞をとりに行った。


おはよう!偏屈ジジイっ!
朝日の中を自転車で疾走しながら どこかの子どもが声をかけてきてVサインを示し ご機嫌に走り去っていった。
・・・ああ、おはよう・・・?


11月の一日目。
今日から冬がはじまったのだ。



 

by.Purple
 

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一年にたった一度。
待ちに待った夜は秋から冬へ移り変わりの時期らしい乾いた冷たさに満ちていて、空は深い藍色に澄みわたっている。
暗く晴れたそこには細い三日月とゴーストたちの白く透き通る影がふわりふわりと過ぎてゆく。
まるで海の底みたい。
海月みたいなゴーストと、色鮮やかな闇の住人達が跳梁する。
鮮やかな色彩といってもそれは藍色に深く彩られていて、闇の生き物なのだと知らせている。
地上にもいくつもの妖しい影が蠢く。
土の下から起き上がったのか、深い森から現れたのか
人の世界からはこっそり隠れていた者たちのたった一夜のお祭り。

さあ僕達も行こう、って。
こっそり二階の窓からそんな世界をみつめていた僕は隣を振り返る。

本当に、マジだったの?なんて少し寝ぼけた声を出すのは生まれた時からの悪友でいつもつるんで悪戯ばかりしていた。それはいまも進行形だけど。

本気も本気、ずっと計画してただろ
声が大きくなりかけたのを、しぃっと彼の指が制するようにそっと唇と鼻先に触れる。

ほら静かにしないとみんなびっくりしちゃうよ
家のものも外の魔物たちも。

大人びた声がそんなふうに囁くからどきりとする。
勝手に先に行くなって言いたくなってしまう。最近急にそんなことを思う時が増えた。
みかけだって背丈はとっくに追い越されたし、実はクラスメイトに紹介してくれってせがまれて困ってる。
紹介なんてしないよ、こいつめんどくさがりやだから。
じっとその顔をみながら、心の中で呟く。
…てそんなことをしている場合じゃなかった。
お祭りはもう始まっているから、早くいかなけりゃ。

あそこ、ほら呼んでる。
囁く声に促されて、庭の大きな木の陰、深い闇が始まるあたりに目をこらす。たしかに手招きするみたいにひらひら白いゴーストが揺らめいてる。
誘うようにいくつもいくつも、白い影がふわふわと踊り続ける。
行こう、と、僕はもう一度ゆっくりその顔をみつめながら言えば今度はしっかり頷いてくれたから、音をたてないように静かに窓を開いた。
小さなバルコニーからこっそり手がかりの雨どいをつたって、誰にも気づかれないで闇の中へ降り立つ。
後ろから軽い足音が響いて、連れも脱出に成功したことを知る。
もうここは闇の住人達の世界で、空気はどこか甘くて深い。いつもの夜とはまるで違う。
ふわふわと空に遊ぶもの、ゆっくりと歩く黒い影
もう子供達のいたずらかおごりの時間には遅すぎるから、黒い影はきっとみな魔物たちだろう。ひっそりと歩く彼らが目指しているのは町外れの小高い丘で、そこは古戦場の跡だとか遺跡だったとか言われていわくつきの場所だ。
きっとあそこがパーティー会場に違いない。

こんなみるからに人間がまじって大丈夫?
面白がってるだけのくせにそんなところはちゃっかりと突っ込みを入れてくる。

大丈夫、ひとの形をしたものもいっぱいいるから
そう言ったら少し首を傾げて僕をみた。
それにちゃあんと貢物は用意しているから。

そっと持って出た小さな袋には深い深い黒のビターなチョコレートがたくさん
高かったけど、お小遣いをこの日為にためてたから平気。

これは内緒だけれどね、実は僕の家系には魔物がいるから、それで教えてもらったんだ。

そう言ったら、反論はされなかったけれど納得はしていない表情。
明らかに嘘とわかったかな。
でも本当はあの街外れの丘で弱っていた小さな闇の生き物が、そのときポケットに入っていた小さなチョコレートのかけらで友達になってくれたからなんてこっちの方がよほど信憑性が無い話なので嘘を突き通すことに決めていた。

さあはやくパーティーへ行こう。
いつもと違う空の天井と星のシャンデリアのダンスフロアで、魔女とダンスしてみせて。
君のステップはそれは素敵で溜息が出てしまうから、こんどは違うところでファン層が広がってしまうかもしれないけれどね。





 
by.blue

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遺していくものを 振り返ってはいけない
後を追われてしまうかもしれないから

いいじゃないか すこしくらいの虚無なんて
どうせまたあらたなめぐりあわせがはじまるのだから

ざわめきを 背中でかんじる




thanks! 雛あられ chan.( イラストレーション )
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さあ!存分に 楽しみなさい!

 
thanks! まぎぃ chan.



 「トリック・オア・トリート!トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
 通りから聞こえてきた声に,ぼくはあわてて穴の開いたシーツをかぶった。パパもママもいないぼくをさそってくれる子なんかいない。いつだって仲間はずれだ。
 急がなくっちゃ。ほかの子にお菓子をぜんぶ取られちゃう。二階からかけ下りると,「ジェフ?遅くならないようにね」とブレンダおばさんの声がダイニングから聞こえてきた。「わかってる」と返事をして,ぼくは勢いよくドアを開けた。
 やっぱり出おくれちゃった。アリソンさんちのマフィンも,ブラウンさんちのミンスパイも,もうみんなに取られたあとだった。あーあ,今年こそ食べたかったのになぁ。代わりにもらったヌガーを食べながら歩いていると,バス停のベンチにポツンと座ってる子がいた。
 黄色いカボチャ頭の子だったんだ。この子も仲間はずれにされたのかなと思って,ぼくは思い切って「ねえ」と声をかけてみた。「君,一人?」ってきくとその子は重そうな頭でこくんとうなづいた。
「早くしないとお菓子がなくなっちゃうよ」
「でも…ボク…どうしたらいいのか,分かんないんだ」
どうしたらいいか分からないなんて,変な子だなって思ったけど,なんだかとってもさみしそうだったから,ぼくは言ったんだ。
「ぼくがいっしょに行ってあげる」
「でも…」
「だいじょうぶ。かんたんだよ。トリック・オア・トリート!言ってごらん」
「…トリック…オア…トリート…」
「そう!さあ,行こう!まだ間に合うかもしれない」
ぼくがその子の手を取ると,その子は「……うん」と小さな声でうなづいて立ち上がった。
「ぼくはジェフ。君は?」
「ボクは…ボクはジャック。みんなにそう呼ばれてる」
「じゃあ,ジャック,行くよ!」
ぼくは仲間を見つけた気がして,うれしくってジャックの手を引いてかけ出した。
 ぼくたちは完全に出おくれちゃってたから,どこに行っても残りものしかもらえなかった。でもちっちゃなキャンディーやキスチョコやしけったポップコーンばっかりでも,ジャックはちっとも気にしなかった。
「ねえ。ねえ,ジェフ。ボクこんなにもらえたよ」
ジャックは両手いっぱいのお菓子を見てとてもうれしそうに笑った。
「ボク…もっともらえるかなぁ」
なんだかぼくも楽しくなって,つられて笑った。
「じゃあ,このふくろをお菓子でいっぱいにしようよ」
ジェームズさんちでもらったドラッグストアの紙ぶくろを広げると,ジャックはその中にお菓子をざらざらと入れて「うん!」ってうなづいた。
 それからぼくたちは,夜のまちをかけ回った。お菓子をくれない家では窓からのぞき込んで大人たちをびっくりさせたり,ふだんは子どもにきびしいアマラおばあさんに焼きたてのアップルパイをもらっておどろいたり,スミスさんちの犬に追っかけられたりして大いそがしだった。ぼくたちが悲鳴を上げたり,笑い転げたりしているうちに,ふくろの中はお菓子でいっぱいになった。
 ジャックと出会ったバス停までもどって,ぼくたちはベンチにこしかけた。ぼくとジャックはふくろに手を入れてお菓子をつまみながら話をした。
「ハロウィンって死んだ人がもどってくるんだよね」
「…そうだね」
「パパやママに会えないかな」
「ジェフ…それは,できないと思うよ」
「なんで?」
「きっと,ジェフのパパとママは,天国にいるから…」
ジャックは少しまじめな声で言った。ぼくは少しさみしくなって,チュロスにかじりついた。
「ボク,ジェフといっしょで,楽しかった」
ジャックがしずかな声でつぶやいた。
「楽しかったなぁ…ボク,忘れたくないなあぁ…」
急にジャックが泣き出したので,ぼくはびっくりした。
「忘れたくないんだ。でも,ボクの頭は,ホントに空っぽだから,すぐ忘れちゃうんだ。忘れたくないよぉ…」
ボクはどうしていいか分からなくなったんだけど,お菓子のふくろをジャックにわたして言った。
「ぼくは忘れないよ。せっかく友達になったんだもの」
「お菓子…ボクに,くれるの?」
「うん。ぜんぶあげる」
ジャックはしばらくだまっていたけど,カボチャ頭の耳の所に指を入れてほじくると,ぼくに一粒のカボチャの種をくれた。
「これ,あげる。お菓子のおれいに」
そう言うとジャックの体はふわりと宙にうかんだ。
「ボク,もう行かなきゃ。ありがとう…ジェフ」
ジャックの体はどんどん小さくなっていった。ぼくはジャックが見えなくなる前に大声で言ったんだ。
「忘れないよ。大人になっても,おじいちゃんになっても。友達だもん。ぼくたち約束したんだ。ぜったいに」

 帰りが遅いってしかられたけど,ブレンダおばさんはぼくをぎゅって抱きしめてくれた。心配させてごめんねってぼくは思った。その日のベッドはあったかだった。
 来年になったらカボチャの種をまこう。大きなカボチャができたら,それでランタンを作ろう。また会えるかどうかは分からないけど,ぼくたちの約束だから。



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written by 侘助 sama. thanks a lot!!
&thanks! やし chan. (イラストレーション)

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