2008ハロウィーン
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それはまだ僕がちいさな子供だった頃のこと
まだ四つか五つか、幼稚園には金髪の外国人の先生がいたことを憶えている。
今にして思えばお友達にも色々な目の色、肌の色の子が大勢いた。
だから夏が終わり涼しくなってくるとハロウィーンの話題でもちきり。
当日は勿論お菓子がいっぱい貰えて夜いつもよりほんの少し夜更かしが許されるから楽しみだったし、手作りの仮装パーティーの準備がまた楽しみでしかたなかった。
毎日、絵本や雑誌それから先生の持ち込む写真であれこれ悩む。
子供といってもそれなりに自我や趣味や、そんなものをみんな強く持っていたから簡単になんて決められない。
けれどその時僕が一番興味を持っていたのはアメリカの新聞で有名な漫画に載っていたかぼちゃの王さまの事。
広い広いかぼちゃ畑。
暗い夜。
大きなかぼちゃに寄りかかってかぼちゃの王さまを待つ男の子がなぜだかひどくうらやましかった。
夜のかぼちゃ畑も大きなかぼちゃも僕はみたことがなかった。
ヒーローに変身とかお菓子をたくさん貰うとかよりもどうしてもそこに行ってみたくて母を困らせて泣いた。
どうしてそんなに惹かれたのだろう、その時の気持ちはとうに忘れてしまったけれどどんなに真剣だったかは憶えてる。
薄暗い夕暮れにこっそり探検に行こうと、家を抜け出す計画を幼稚園の友達にこっそり持ちかけたのだけれど皆それぞれが自分のハロウィーン計画に夢中でちっとも本気になんてしてくれない。
おもしろいとも思ってもらえやしなかったんだろう。
だから僕はひとりでも家を抜け出そうなんて、意地になってその日ほんとうにこっそり家を出た。
かぼちゃ畑がどこにあるのかなんて基本的なことすら知らなかったくせに闇雲に飛び出した足が向かったのは、よく遊びに行く公園の方向。
ゆっくりと暗くなりはじめる空と誰もいない公園に帰ろうかと怯んだその時、土を踏みしめる軽い足音に驚いて振りむけば自分と同じ位の男の子が立っていた。
知らない子だ、と思ったけれどどこかで会ったことがあるかもしれないなんとなく見覚えのある顔。
ちょっとくせのある髪と大きな目は黒かったからあやしいカタコトの英語を使う必要はないとほっとして。
その子となにか話したり遊んだりして、でも真っ暗になる前には家に帰った…
…らしい。
実は僕はちっともその辺りのことを覚えていなくて、何度も思い出そうとしても出てくるのはそのあと恐ろしく怒られて薄暗い納戸に閉じ込められて泣いたことくらい。
ひとりぼっちの狭い闇がこわくてこわくて、そのショックでみんな忘れてしまったのかも。
こんなことを急に思い出してみたのも街にオレンジ色があふれて季節が変わったんだなあと思うほど空気が冷たくなったからで、他意はなかったのに。
あの子は誰だったんだろうなんて呟いたら、目の前の相手はひどく不機嫌な顔をしてじっと僕を覗き込む。
真剣に憶えてないの?って聞き返されて。
あいまいに頷いたら、がっくりと肩を落とした。
印象薄い方じゃないと思ってた、なんてぶつぶつ呟いてるからまさかと思ったけれど、あれは?
クラスが違ってたけど、同じ幼稚園だったじゃん
そう言って笑う顔がいつも以上に意地悪に見えたのは気のせいかもしれないけれど、それでも信じられない。
あんなに偶然に出会うなんて、もしかして僕達が友達になることは運命だったのかも。
そう言ったら、彼は爆笑して
あれはおまえが誰彼となく今日こそかぼちゃ畑に行くって決意表明してたから
だから家の傍から見張ってたんだ、なんて言う。
ばかだし、迷うにちがいないと思って。
そんなひどい言葉まで投げつけて。
でもあの日、年もほとんど違わない君が僕の為に家を抜け出してくれたことや
今こうして友達になれたこと
それは神様がくれた運命だって、言い切ってしまえるほどの大きなことだと僕はこっそりと胸の中で思う。
いまは意地悪な笑顔で皮肉に笑う君がやさしくて心配性なんだってちゃんと知っているし。
まだ四つか五つか、幼稚園には金髪の外国人の先生がいたことを憶えている。
今にして思えばお友達にも色々な目の色、肌の色の子が大勢いた。
だから夏が終わり涼しくなってくるとハロウィーンの話題でもちきり。
当日は勿論お菓子がいっぱい貰えて夜いつもよりほんの少し夜更かしが許されるから楽しみだったし、手作りの仮装パーティーの準備がまた楽しみでしかたなかった。
毎日、絵本や雑誌それから先生の持ち込む写真であれこれ悩む。
子供といってもそれなりに自我や趣味や、そんなものをみんな強く持っていたから簡単になんて決められない。
けれどその時僕が一番興味を持っていたのはアメリカの新聞で有名な漫画に載っていたかぼちゃの王さまの事。
広い広いかぼちゃ畑。
暗い夜。
大きなかぼちゃに寄りかかってかぼちゃの王さまを待つ男の子がなぜだかひどくうらやましかった。
夜のかぼちゃ畑も大きなかぼちゃも僕はみたことがなかった。
ヒーローに変身とかお菓子をたくさん貰うとかよりもどうしてもそこに行ってみたくて母を困らせて泣いた。
どうしてそんなに惹かれたのだろう、その時の気持ちはとうに忘れてしまったけれどどんなに真剣だったかは憶えてる。
薄暗い夕暮れにこっそり探検に行こうと、家を抜け出す計画を幼稚園の友達にこっそり持ちかけたのだけれど皆それぞれが自分のハロウィーン計画に夢中でちっとも本気になんてしてくれない。
おもしろいとも思ってもらえやしなかったんだろう。
だから僕はひとりでも家を抜け出そうなんて、意地になってその日ほんとうにこっそり家を出た。
かぼちゃ畑がどこにあるのかなんて基本的なことすら知らなかったくせに闇雲に飛び出した足が向かったのは、よく遊びに行く公園の方向。
ゆっくりと暗くなりはじめる空と誰もいない公園に帰ろうかと怯んだその時、土を踏みしめる軽い足音に驚いて振りむけば自分と同じ位の男の子が立っていた。
知らない子だ、と思ったけれどどこかで会ったことがあるかもしれないなんとなく見覚えのある顔。
ちょっとくせのある髪と大きな目は黒かったからあやしいカタコトの英語を使う必要はないとほっとして。
その子となにか話したり遊んだりして、でも真っ暗になる前には家に帰った…
…らしい。
実は僕はちっともその辺りのことを覚えていなくて、何度も思い出そうとしても出てくるのはそのあと恐ろしく怒られて薄暗い納戸に閉じ込められて泣いたことくらい。
ひとりぼっちの狭い闇がこわくてこわくて、そのショックでみんな忘れてしまったのかも。
こんなことを急に思い出してみたのも街にオレンジ色があふれて季節が変わったんだなあと思うほど空気が冷たくなったからで、他意はなかったのに。
あの子は誰だったんだろうなんて呟いたら、目の前の相手はひどく不機嫌な顔をしてじっと僕を覗き込む。
真剣に憶えてないの?って聞き返されて。
あいまいに頷いたら、がっくりと肩を落とした。
印象薄い方じゃないと思ってた、なんてぶつぶつ呟いてるからまさかと思ったけれど、あれは?
クラスが違ってたけど、同じ幼稚園だったじゃん
そう言って笑う顔がいつも以上に意地悪に見えたのは気のせいかもしれないけれど、それでも信じられない。
あんなに偶然に出会うなんて、もしかして僕達が友達になることは運命だったのかも。
そう言ったら、彼は爆笑して
あれはおまえが誰彼となく今日こそかぼちゃ畑に行くって決意表明してたから
だから家の傍から見張ってたんだ、なんて言う。
ばかだし、迷うにちがいないと思って。
そんなひどい言葉まで投げつけて。
でもあの日、年もほとんど違わない君が僕の為に家を抜け出してくれたことや
今こうして友達になれたこと
それは神様がくれた運命だって、言い切ってしまえるほどの大きなことだと僕はこっそりと胸の中で思う。
いまは意地悪な笑顔で皮肉に笑う君がやさしくて心配性なんだってちゃんと知っているし。
by.blue
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