忍者ブログ
2008ハロウィーン
[40]  [43]  [39]  [38]  [37]  [36]  [35]  [34]  [33]  [32]  [31
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



あー、ご婦人。ちと道を尋ねたいのだが・・」
声をかけられた初老の婦人は振り向いて答えようとしたが、彼女の目線の高さにはその声の主の姿が見えない。
そして、そのまま視線を下に移していくと、地上約1メートル20センチの所で紫色の物体を見つけた。
「はいはい。あらあら、まぁ~かわいらしいこと。そうね、その扮装は、え~っと、・・・あぁ、わかったわ。ナスちゃんね!」
「?!、?!、?!、!!」
確かに彼の着ている紫色の服装は、キュートなカーブがお尻の辺りでちょっぴり反り返っていて、まあるいナスのふくらみを演出している。
そして、頭に乗っているやや濃いめの紫の笠は目の辺りまで覆い被さって彼の表情を隠しているが、それでも彼が婦人の言葉にひどく驚き、更に怒りを覚えているのがわかった。
「レディに向かってこんな事を言うのは大変失礼だとは思うが、私はこの侮辱に我慢できかねます。
いいですか、ご婦人。あなたは目が少しお悪いようだからお教えするが、これは我が王国の正装であってけっして、けっして、ナスなどではありませんから!!」
彼のあまりの剣幕に初老の婦人は目をまん丸にして驚いてみせたが、あっ、と何かを思い付いた顔になり、すぐにドレスの両端を少しつまんでお詫びの仕草をした。
「あらあら、そうでした。
これは大変失礼をいたしました。今年のハロウィンの夜はいろいろなお国の方がいらっしゃるのを私すっかり忘れていましたわ。
そう、今日は一時、月の光が夜に飲み込まれる日。あぁ、私たちの国では月蝕と呼びますけどね。
300年に一度ハロウィンの日に夜の国の扉が開く特別の夜でしたわね。」
「ほう、あなたは300年の扉のことをご存じでしたか」
「えぇ、えぇ、知っていますとも。私の遠い祖先は300年前、今日と同じハロウィンの夜にこちらのお国へお嫁に参りましたのよ。
あぁ、では今日はどなたかのお輿入れがあるのですのね」
「いかにも。私は今日主人に変わりその方をお迎えに参ったのです」
そう言うと、ナス色のお尻をピンと張り、彼は誇らしげに胸を張った。
「あぁ、そうだ。こんなことをしていられないのだった。
ご婦人、「黒のクレア」というレディの家はどちらにあるのか教えていただけないだろうか」
「あら、あら。今日お嫁に行くのはクレアなのね。でも、彼女の婚約者は3年ほど前に森で行方不明になったはずじゃ・・・・」
「ご婦人。申し訳ないのだが、私にはよけいなおしゃべりをしている時間がないのだ。
我が主人の元へ、あの月の光が夜に飲み込まれる前にレディをお連れしなければならないのだから」
「まぁ、私ったら、ついお話に夢中になってしまって、ごめんなさいね。
ここから西の方に森が見えますでしょう。その森の入り口の小高い丘の上に建ってる、赤い屋根の小さな家がクレアの家ですのよ。
入り口に「仕立物承ります。(黒に限ります) クレア 」という看板があるからすぐにわかると思いますわ」
「ありがとう。」
そう言って彼は頭に被っていた帽子をちょこっとあげると、中から黒曜石のような不思議な黒い瞳を持った少年の顔が現れた。そして彼は婦人が指さした西の森に向かって走り去って行った。
 
(あぁ、彼は夜の国のお使いだったのね)
 
婦人は、黒曜石の瞳は夜の国の住人の特徴だと昔ひいおばあさんに聞いた事を思い出しながら
 
「でも・・・、あの姿は、どう見ても[ナス]よね・・・」
とつぶやき小さく笑った。



1798e8b4.jpg

 
thanks! Q chan.



PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ありがとうございましたv
参加首を長くしてお待ちしてました(笑)
可愛らしい作風、とても楽しく拝読いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。
blue 2008/11/03(Mon)00:59:20 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
アクセス解析
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最古記事
アクセス解析
最新TB
バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]

Graphics by Lame Tea / designed by 26℃