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Trick or Treat! Trick or Treat! Trick or Treat! Trick or Treat!
家の外で、子どもたちが菓子をねだる声がする。
なんて騒々しい、まったくやかましい!変なかっこうをしてどこの子どもかもわからんのに、なんで菓子などやる必要があるか。わしはそんなバカ騒ぎなどごめんだ!
うるさいっ!菓子などやらんわっ!帰れ帰れっバカ垂れどもめっ!
巷で有名な偏屈ジジイ ダブ・ゲッチイは、二階の窓から身を乗り出してがなりつけながら子どもたちを追っ払った。
ゴーストたちは悪態をつきながら消えていったが さて。ダブはキリリときつく彼を睨んでいた目には気がつかなかった。
風が強い。黒い雲が獣のように走っては消えて行く。夜中を過ぎているのになにやら寒くて眠れないでいると、天上の影が変に蠢いた気がする。なんだバカバカシイ、気のせいだ。
ところが今度は台所で調理をしている音がしてないか?居間ではソファーのクッションが投げっこされ、スプリングに弾んで飛び跳ねワキワキ楽しんでいる気配までしている・・・!
だ、だれだ人の家で暴れているのは!ダブはベッドから降り、護身用だが骨董のマスケット銃を握り締めて音のする部屋へ向かった。
勢いよくドアをあけ、怒鳴りつけて構えた、が。
だれもおらん・・・?
立ちつくしていると不意にろうそくの火が灯った。そしてすぐに消えてはまた灯る。
家具が鳴り出し引き出しが踊り、額に入った絵画からは中の住人が飛び出してくる。本は勝手に空を飛び窓は開閉を繰り返す!
さすがのダブも恐怖に駆られ、サイドボードの影に隠れてその信じられない光景に今にも心臓が止まりそうになりながら でもしっかりと目は釘付けにされていた。
いや~な汗をかいた。なんとなく尿意までもようしたが立ち上がりなどしたらたちまちヤツラに襲われてしまうかもしれない。
人影、ではない。そこで集って暴れているのは 得体の知れないタダナラヌものたち!形がすでに人じゃない。それらしいのもいるけれど透けて向こうが見えている。それらがこぞって宙に舞ったり壁をすり抜けたり ものを操ったりしながら騒いでいる。
怖ろしい、本当にこんなことがあるなんて・・・!
しばらく様子をうかがっていると、ダブはそれらがとても楽しそうに遊んでいるらしいのに気がついた。
派手に羽目をはずすことを みんながいっぱいに楽しんでいる!流儀は違うが弾んだ気持ちが充満しているのがなぜかわかる。
偏屈ジジイはいつしか自分まで なにやら解放されたような心持でほんわりぼんやりそれらの無茶振りをまるで自分がしているように愉快な気持ちになっていた。
どれくらいそうしていただろう。うっすらと、夜が明けはじめ・・・
今まで暴れていたモノたちがそちらをふりかえり 動きをとめた。
そして一体 また一体と、明けきらぬ未明の空へと消えていく。
そんな!もう行ってしまうのか!?
ジジイはたまらずにサイドボードの引き出しをあけ 一つかみのそれを消えて行くヤツラの方へ投げつけながら言った。
来年も来たら またこれをやるぞ!
偏屈ジジイ秘蔵中の秘蔵菓子 ウイスキーボンボンの キラキラ輝く色とりどりな粒たちが新星のように光って
ゴーストの手に落ちた。
ヤツラはゆらり にやりと笑ったようで
こちらに何かを放ってよこした。
ダブジイさんはキャッチしてしまったものを見て 今度こそ気絶した。
朝、ジイさんはいつも通り整然と片付いている部屋で目を覚ました。夜中の騒ぎの様子などどこにも残っていなかったが サイドボードのひきだしのウイスキーボンボンが減っていたし、なによりも、白い大きなしゃれこうべが自分の横に転がっている・・・。
ジイさんはゆっくりと起き上がり、そのナンノモノかわからない奇妙な骨を棚におき、新聞をとりに行った。
おはよう!偏屈ジジイっ!
朝日の中を自転車で疾走しながら どこかの子どもが声をかけてきてVサインを示し ご機嫌に走り去っていった。
・・・ああ、おはよう・・・?
11月の一日目。
今日から冬がはじまったのだ。
by.Purple
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