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2008ハロウィーン
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written by まり那 sama.
thanks a lot!!

 

そこに灯りはなかったはずであった。
呆然と立ち尽くしながら、ほんの数秒前を振り返る。
けれど今、暗闇に、ぽう…と浮かび上がって見えるのは、確かにオレンジの光だった。鈍いオレンジ色をした灯りが、ふたつ。
うっそうと茂る木々の中を歩いていたのだった。とっぷりと暮れ落ちた森は闇に包まれていて、遥か上空、矢を放つ月の明かりだけが唯一の色彩だった。そのはずであった。
「なかっただろう、あんなものは」
思えば、不思議なことは他にもあった。
さわさわと風に揺れる梢の音が、何重奏もの深い旋律となって夜を巡っている。その、悪魔の囁きにも似た声を耳にしていると、否が応にも思い出すことができた。元来自分はそうとうな怖がりのはずで。このような時間にこのような場所を歩いている理由がそもそもみつからなかった。
どこまでも暗く、深い森の中に、ぽつりと浮かぶ光の玉、ふたつ。
「いったい何だというんだ」
近づくにつれ、だんだんと大きさを増していったそれは、やがてその正体を現した。
気づけば大きな門の前に立っていた。石でできた門柱の上に備え付けられた、それは灯りだった。右の柱と左のそれに、ひとつづつ。
門の左右に長い塀が続いていたのだとは今気づいた。
と、その時。
驚かないわけはないだろう。
まるでそれ自体に意思があるかのように、ゆったりとした動作で、門はその両手を広げたのだ。いらっしゃい、とでも言うかのように。扉が開いた。
流れゆく灰色の雲が、束の間天の月を隠し。
真の闇が、困惑に引きつった頬の上を通り過ぎていった。
「……」
ごくり、と一度喉を鳴らし。
恐る恐る、といった風情で中に足を踏み入れた。怖がりであるはずの自分のこの勇気が、単なる好奇心とは違うものであるということを、なぜだろう、わかっている気がするのが不思議だった。


This story will continue tomorrow.
 
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祝!初参加^^
まり那ちゃん、わたくしどもの企画ものに快く参加してくださりどうもありがとう☆
三回にわけてお送りさせていただくことにいたしましたので、あと二回どうぞよろしくって、もうこっちのもんか^^
初参加、ありがとねっ!またよろしく~っ!!!
Purple 2008/10/16(Thu)02:25:13 編集
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