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2008ハロウィーン
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おかしくれなきゃいたずらするぞ

毎年、寒くなりはじめる季節がやってくると思い出す幼い声
子供たちの誰もが楽しみにしているその行事の暗い夜
街中を楽しげに囁き交わしながら、仮装の子供たちがざわざわと小さな喧騒を友にして歩き回るというのに
そのこはそんな子供に混じることもなくひっそりと静まる家の中
小さな足音すら消して僕の部屋のドアをこそりとノックする。

おかしくれなきゃいたずらするぞ

そんな声が細くあけたドアの隙間から聞えて、笑った顔が覗き込むのを僕も楽しみに待っていた。
子供たちと一緒に行かなかったのが、実は身体が弱い僕の為だったなんてずっとあとになるまで気づけなかった。
あの暗い夜の楽しかったことは今もはっきりと覚えている。

広い部屋の天井に小さな灯りが映し出す、ゴースト
あのこがふざけて被る仮面がわりの毛皮の敷物
大きな黄色いかぼちゃの提灯
お菓子をたくさんつめたバスケット
ふたりで声をひそめて笑いあった楽しい夜更けのゲーム

もう僕は身体も丈夫になって熱を出して寝込むこともなくなったから
自由に出かけることができるし、ひとりでも平気。
あのこもやがて遠くの学校へ行ってしまった。
それはいいことなのに、僕はこの冷たい冬の前の季節には淋しくて
ひとりこっそりと暗い夜の廊下を覗き込んでみたりする。

おかしくれなきゃいたずらするぞ

あの懐かしい声がまた聞えないかと耳をすませながら。
聞えるはずもない声を待って、悲しくなるのはそろそろ止めにして
来年の今日はきっと僕があのこのドアを叩きたい
今年はそんなことを思いついて、僕はひとりでにっこりと笑顔になっていた。





 
by.blue
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その一族の集う夜会に招かれた僕は圧倒された。
噂には聞いていたし、実際僕の友人も(僕をその夜会に呼び寄せた男だ)つい最近そのような状況に陥ったばかりだったから。
彼の一族、アッシャー家の男子は誰もが どんなところにいてもまごうことなき印をもっている。

その左手の、小指と薬指が 根元から無いのだ・・・。


どこまでホントで嘘なんだかまったく怪しい話だが、ついに俺自身もこうなってしまったことだし
聞かせてやろうか?うちに伝わる呪いの伝説。

なんなのだ、こいつは。
不遇の身になったのを憂えているのではないかと心配したが、むしろうれしそうですらある。

彼は一族の肖像が飾られている回廊に僕を連れて行った。
そして一枚の肖像画の前に立ち止まり、まっすぐに僕を見て言った。

この男が、事のはじまりだそうだ。
・・・なぜそこで目玉がキラキラ輝くか・・・?こっちが気恥ずかしい、直視できない。

いや、ほんとに胡散臭くってどうかとも思うんだがな。
この男、生前に魔女だか悪魔だかに魂を売ったらしいんだな。
なんのファンタジーだ、お前らしくもない。

つまり、よくある魔界の者に恋をしてハートを差し出すと誓ったというたぐいだ。
ところが彼は心変わりした。約束を強引に反故にして彼にとっての真実の相手と結ばれた。
おとぎ話でもまずい展開じゃないか、魔界のものを裏切るとロクな事にならない。

そして事が起こった。
誓いのリングをはめた指とそのとなりにあった優しい小指がその骨ごと 彼の身体から切り落とされた。

僕は 尻の先からおぞ気が立ち上がるのを感じ、身震いした。

まぁ、そういうことらしい。
・・・なんだよ、どういうことだよ?

アッシャーの、こバカにしたような目が僕にすべり、言った。
だからその魔女だか悪魔だかの復讐だろ?よっぽど執着してたんだよ、この男に。
自分が欲した魂を他の者に盗られる位ならそんな指、永遠の誓いなどさせるもんかってな、バッサリ。
そんなこんなで、彼以降、わが一族の男には呪いがかかったといわれているわけだ。

魂を差し出す相手が出現すると、何かしらの原因で指を失う。まことしやかに語り継がれているロマンチックなおとぎ話さ。

彼は、失った指をいつくしむようにそっと傷ついた左手をさすりながら・・・

どうして僕を そんな目で見ているんだ?
目、目が、はなせないっ!!

急にノドが渇いて生唾を飲み込んだら、派手にゴキュッと音が出てしまった。
アッシャーはそこで会心の笑みをみせてから僕に、熱い飲み物でものもうか と 誘った。

深追いしてはいけない。これは悪魔の罠だ。
どうしたんだ、僕よ!


それにしても見事に、アッシャー家の男たちには指が無いのだった。



 
by.Purple





聖なる大河の岸で燃え上がる炎は死者への鎮魂歌
すべてを舐め尽くすかのように炎は喜び震え燃え狂い
死者は神の国へと帰るのだ



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なんて美しい業火かと旅人はみつめるだけの傍観者でしかない
あの炎に抱かれて美しい国へと旅立てたらと
望んだところでそれは叶えられぬ虚しい夢想だ

その国の神々は
川は
炎は
許してくれるというのに

ひとはそれをなしえず
ただ焦がれるだけの臆病で愚かでちいさな命

捨ててしまえと炎は誘う
やさしい腕で闇は誘う




 
by.blue


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なに?めずらしいじゃない にやにやしたりして。
リリン・ウィッチは、伯爵の使役に問いかけた。

彼は、小さなクリスタルをかざしながらひとりごちで、あくことなくそれをながめているところだった。

人の涙を 手に入れたんだよ。

ここにくるまでにあったことを、彼は静かに語りだした。

なんだかね、僕はあんなに人を美しいと思ったことはなかったんだ。
涙が、それは綺麗で。

リリンは 伯爵の使役を驚きをもってみつめた。

最初は哀しみに打ちひしがれていたのが どういう変化をきたしたのか。
せつなさも 傷ついた心も その涙によって洗い清められていくようで。
仕舞には、その犬への変わらぬ愛情でいっぱいだったんだ。
泣きながらほほえんでぽろぽろ涙をちらしてね・・・。
脆いくせに、なんて強くいられるものかと、だからおもわず採取してきてしまったんだ。

彼は、輝く小瓶をリリンに示し ちょっと体裁が悪そうに笑ってみせた。

それであなたは、伯爵にそのこのことを報告するつもりなの?

使役は顔をしかめた。
それが義務でもあるんだけどね、どうも気がすすまない。
伯爵の手に落ちれば、あのこはもう、清廉な涙などとは無縁になってしまうんじゃないか?

リリンはそこで大きくうなずいてみせた。
そうよ。
第一あのこは、ミルはわたしの大切な人間よ。
あなたがたには渡せない。
あのこの血の一滴だって、伯爵なんかには重すぎる毒になるわ。
あの方は、絶滅寸前の処女の血でも啜っていれば充分よ。
あなたもね、ミルの涙を口にでもしたらきっと奇麗に浄化されて、その存在すら残らないかもよ?

挑戦的で、すでに勝ち誇っているように、口元には半月方の笑みをたたえて彼女は言い放ったのだった。

あのこのことは、伯爵には黙っていよう。
しかしどういうわけなんだろうね?あのこの涙に僕は拘束されてしまったみたいだよ。

いつのまにか近づいてきていたりリンが、彼の耳元でささやいた。

わたしもずっと、あのこの呪縛にかかっているみたいなのよ。

二人の闇の住人たちは、顔を見合わせて苦笑いをこぼした。


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闇に染めたくないものも、いるものさ。






 
by.Purple




街外れの墓場にいつのまにか住みついたその子はとびきり美しい繻子のような毛並みで眸も真っ黒
夜の化身みたいに優美な身のこなしでしゃなりと歩く痩身の美しく長い手足

なんて素敵な夜の女王

ここらの猫たちも勿論、彼女の話題でもちきりで
恋の季節まっただなかな昨今、気もそぞろな牡猫たちがかわるがわる誘いをかける

だけど彼女はつれなくて、どんなに美しい猫がやさしい声をかけたって振り向いてすらくれないのだ
冷たくなった季節にはあったかい恋人がどんなにかいいものかって大方の大人の猫たちは知っているというのに、彼女はひとり冷たい墓場の鬱蒼とした梢で月をみつめるばかり

ああつれない夜の女王

かきくどく声になんて一瞥すらくれやしない
まるで彼女がじっとみつめる白いお月さまそのもののよう

冷たく美しく、いつまでたってもひとりぼっち






 
by.blue
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