2008ハロウィーン
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化け物なのだと冷たいままの身体に思い知らされる。
ひととしての生をどうやって終えたのか、思い出せはしないけれどこうやって墓場で目覚めた瞬間に、理を無視した存在に成り代わったのだと気づいていた。
神様の門はもう二度と開かれない。
ふたたび人として生を受ける日はけしてないことを少しだけ哀しくは思う。
「どうして、俺のことを知っていた?待っていたと言ったのはなぜだ?」
傍らにじっと佇む魔物に問いかけてみる。
己自身よりよほどこちらに詳しいらしい魔物は黙ったままだ。
「俺はなにひとつ覚えていない。おまえなんか知らない」
ひどく懐かしいとそう思ったのも確かで、帰りたかったとそう思えたのも事実だったけれど記憶していることなんてまるきりない。
魔物は肩口にゆれるさらりとした黒髪を揺らしてただみつめている。
黒い瞳は底知れないほど深い闇で、冷たいのに愛しさを浮かべたぬくもりが感じられる。
「おまえは人間だったから、生ある頃のことはみんな忘れてしまう。けれど俺は覚えている」
月はまだ細く頼りない光を投げかけるだけで、黒々と深い闇にいまにも飲み込まれてしまいそうだけど、人ならざる身にはそんな闇も居心地良くて風さえ眠りについたような深い夜の中、魔物と己だけが密やかに目を覚ましている。
待っていたと言ったのはきっと本当のことなのだろう。
魔物の眸は闇のように深く暗く、心地良いぬくもりに満ちている。
「やっとまた会えたから、今からはずっと共にあろう」
死者の王よ、と
魔物は囁く。
「もうひと冬、また待つのかと思ってうんざりしていた」
そう続ける魔物は幼い子供のような笑顔を浮かべるので
暗い冬は孤独な魔物にも厳しい季節に違いないから、眠りがこれ以上続かなくて良かったと安堵しながら思った。
たとえ冷たいだけの身体しか持たない闇の生き物であろうと、身を寄せ合えばひとりきりよりきっとあたたかいだろうから。
by.blue
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ニア・フランケンシュタイン博士は、研究室で私に
本日の秘密のレシピについて語ってくれた。
この神秘の実験とは
神妙で敏捷な猫の爪、海底の暗闇を見る魚の眼、
人の魂に 死海の塩を加え、地獄のごとき業火で煮、
仕上げに甘やかなチューべローズの香油をたらす。
すると、どうなるのですか?博士?
実体を持たぬ生命体の誕生じゃい。
大昔の博士の生み出したような、つぎはぎだらけのモンスターではないぞ。
体こそないが、有能な助手になるだろうよ。
では、やるぞ?
博士はすごい。
何も無いところから生き物をつくりだそうと研究しているのだ。
私はいつも手に汗にぎって見守っている。
そして今日こそ、それは生れるのだ!
博士!何か湧いて来ましたっ!
だんだん大きくなってるみたいですよ!
おお・・・っ!!
鍋から、恐ろしげな黒い影がたちのぼってきた!
にゃ!てへへへへっ^^
!!?☆
実験は、たぶん成功したんだと思う。
さすが博士だ。
彼は、なんだかいつもにこにこ陽気に宙に浮きながら、ちょくちょく博士のからだに入って遊んでみたりするから、博士までニコニコ顔になってそれは不思議な光景だけど、そんな博士を見るのは物珍しくちょっと楽しい。
そして優秀な助手にはちがいない。
博士は失敗だ~っ!おそらく花の香油を入れたのがいけなかった!なんて叫んでいたけど私はこれはよかったと思う。
おかげでこのニコニコに侵入された博士は、真昼間の散歩にも無理やり出る羽目になって、前より少し健康的に見えるから。
私も時々からだをかしてあげている。
ニコニコが入ると、いろんなものが、変わって見えるのがおもしろい。
彼のことを、博士と私は秘密のフランちゃんとよんでいる。
by.Purple
ひとりでどれほど待っただろう
魔物は暗闇の中、ほつりと呟いた。
永遠のはずの死の眠りについた身体は霊廟の数多の棺のひとつに納められ
時に訪れる人々の手向けの花は絶えることもない。
そこはこの国の英雄と呼ばれる者の血族の霊廟だったので
たとえその直系の者が絶えたとしても変わらなかった。
昼は静かな墓参者の足音が響く
けれど夜ともなればそこは死者たちの国だ。
魔物はもはや神も十字架も恐れはしなかったから、霊廟に入り込むことも棺の蓋を開けることも苦にはならない。
いくつもいくつもそこにある棺の内は魔物の手にかけられ無念に絶命した者も多いというのに、邪魔は入らなかった。
目指す棺はただひとつ
真新しい、今だ献花の絶えぬ華やかなもの
争うだけの歴史に終止符を打った本当の英雄
もう追われるばかりの身ではなくなったというのに
その小柄な英雄が命の火を消したその日まで
けして魔物は姿を現すことはなかった。
相容れない存在だったが刃をまみえる瞬間だけはまるで血を分けた者のように近しく思えた。
争いを止めて剣を捨てたその相手の前には、だから出て行くことなど考えられなかった。
もう一度会いたいと、望みは冷たく眠る死者との逢瀬として叶えられる。
物言わぬ身体は青く冷たく、これが望みなのかと訪れるたびに後悔するのだが
しかしいつか魔物は気づいた。
冷え冷えとした暗い霊廟とはいえ、その身体が朽ちてゆく様子はなく季節は移る。
それが神という絶対者の意思なのか、己の未練なのか
どちらにしてもきっと返してくれるに違いない
どれだけ長い時間が経とうともきっと。
それから気が遠くなる位長い時が過ぎて、ひとの歴史も流れてゆく
権力の在り処も移り変わり、英雄の霊廟も忘れられ朽ちるにまかせられいつしか荒れた人のよりつかぬ暗い闇に閉ざされる。
それでも魔物はたったひとつの棺を守っていた。
朽ちることのない身体は死の眠りについたあの日のままだから
その眸が開かれる瞬間だけを待ち望み
魔物はその傍らから離れなかった。
暗い闇に閉ざされた、死に取り巻かれた廃墟のなかで。
by.blue
いったいいつからここにいたのか、浮上したように意識だけがぽかりとあって自分が何者なのかすらわからない。
薄い暗闇にぼんやりと視界が開け始める。
それから冷たい感触を指先らしい末端に感じて、ゆがて節々の痛みに身体を意識する。
辺りは闇が満ちていて、己の姿を確かめる光もなにもないらしいからどんな形なのかもわからない。
それにいったい何だ?
記憶らしいものも、生き物の本能もどうやら持ち合わせていないというのに、この意識だけがある存在とはなんだろう?
お目覚めか?
突然低い響きの外からの声にびくりと竦み、それから起き上がる。
いったい何者なのだ?
憶えていないのか?
ここは墓場で、生きているものは地に住む虫か月夜の逢引を楽しむ猫達位だから、自ずとそれは知れるだろうが。
おまえは死者だ
起き上がったばかりの
そしてたったひとりの死者の王
声の主は低く笑ってじっとみつめながら近づいてくる。
細い月の弱弱しい光が雲間からかすかに顔をだしてその姿を浮かばせる。
闇のように深い漆黒の闇を纏う、魔物。
すぐ傍らに膝を折ると、その美しい笑顔が楽しげなことに気づかされる。
待っていた、ずっと、と…
闇は深くてけれど、戻ってきたのだとやっとその時思えた。
by.blue
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